心はマリー・アントワネット

見たいものが日本に来ない?じゃあ自分が行けばいいじゃない!

Wilco's Glenn Kotche / Modern Drummer Magazine インタビュー その6

MD:本当に満足のいく演奏ができたと初めて思えたのはどのレコードですか?

 

グレン:ポール・K&ウェザーマンの「Love is Gas」だよ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドラマーのモーリン・タッカーがプロデュースしたんだ。ちょうど大学を卒業したばかりの頃で、僕のキャリア形成においてひじょうに重要なアルバムだった。大学では90年代のドラムのスーパースターたちの演奏をたくさん聞いていたから。そのアルバムのプロデュースをモーリンがやると聞いて、僕はヴェルヴェット・アンダーグラウンドにどっぷりと浸かった後で、彼女のミニマルなアプローチを徹底的に掘り直して調べ上げていた。それから僕はアフリカンドラムをフィールドレコーディング(注・スタジオ内ではなく自然の・野外の環境での録音)するのが大好きなんだけど、それもモーリンの影響がとても大きい。彼女はデイヴ・ウェックルやヴィニー・カリウタやスティーヴ・ガッドとは似ても似つかないけれど、あの時期に彼らと同じように僕に大きな影響を与えてくれたことは本当によかったと思ってる。

 

MD:現在あなたに刺激を与えているプレイヤーについて話してもらえますか?

 

グレン:Oh, Yeah! ジョー・ルッソが大好きだよ! 彼はとても自由で、オープンで、音楽的だ。いろんな異なるスタイルの融合でもある。彼は主にロックをやっているけど、ジャズやインプロヴィゼイションのバックグラウンドもあるからね。イアン・チャン。ビートとタイムキープへのアプローチの仕方、スタッタリングと柔軟性…。彼のプレイは極めて一般的ではない。とてもクールで新しいんだ。クリス・コルサノ。インプロヴィゼイションをやるときはこいつとプレイするのが大好きなんだ。それだけじゃなく、他のセットでの彼を見ているだけでもね。彼には自然のパワーがあって、それは2本のスティックが作り出す音の壁だ。単なるギミックじゃない。素晴らしいプレイヤーだよ。

 

もう一人、ステファン・サン・ファンについても話したいな。今はニューヨークに住んでるけど、フランス人で、昔はロンドンでプレイしていて、その後マリへ移ってアマドゥ&マリアムと一緒にプレイしていたんだ。その後(伝説的なブラジルのミュージシャン)カエターノ・ヴェローゾの息子のモレーノ・ヴェローゾと出会ってブラジルに移ったんだけど、僕はそこで彼と出会ったんだよ。10~15年前にオン・フィルモアで+2(モレ―ノ、プロデューサーのカシン、ドミニコ・ランセロッティ)と一緒に現地のパーカッション・フェスティバルに出演したんだ。ステファンはドミニコとツインドラムで演奏して、二人が持っていたフィーリングは現実じゃないみたいだった。オン・フィルモアは2013年か14年にブラジルを再訪して、リオで彼らと「Happiness of Living」というアルバムを作った。僕とステファンがツインドラムで、マウロ・レフォスコがパーカッションで、この二人とプレイするのは信じられないくらい素晴らしかったよ。彼らは二人とも現在デヴィッド・バーンと演奏してるんだ。彼らが実際に初めて一緒に演奏したのは、オン・フィルモアのレコーディングだったと思う。ダリン・グレイがベースで、ステファンとマウロと僕がドラム担当で、曲ごとに違うゲストに参加してもらったんだ。このレコードは2年前にノーザン・スパイ・レーベルから発売されて、2回ライブをやった。ブルックリンのナショナル・ソーダストとマサチューセッツのウィルコのフェスでね。それで僕はステファンとのツインドラムをまたやることができたんだ。彼はアフリカとフランスの音楽の影響を受けているし、ブラジルに10年以上住んでいるから、そのすべてを身につけているんだ。このレコード(「Happiness of Living」)に彼が書いてくれた「Foli Ke」っていう曲があるんだけど、僕はとてもじゃないけどこんな風に演奏するなんて思いつかないよ。とても細かく細分化されているんだ。彼の演奏に身をさらしていると、たくさんの可能性が自分に向けて開かれるんだよ。

 

でも、なんであれ、僕にとって刺激的じゃないドラマーなんてほとんどいないよ。どんなにひどいドラマーでもね。彼らのとても奇妙で風変わりなやり方を見ると、僕はこう思うんだ。「見方によってはクールだよな…。こういう風にやってみようかな?」ってね。

 

(終わり)

 

メインのインタビューはここまでですが、元記事には現在のOde to Joyツアー(中断中だけど…)でグレンが使っているギアの詳しい解説があります。写真もたくさん! 「Ode to Joy」の曲をどうやってステージで演奏しているか、を実演しながら解説している動画もあるので興味のある方はぜひご覧ください~。

 

https://www.moderndrummer.com/article/april-2020-wilcos-glenn-kotche/