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Jeff Tweedy インタビュー  その1/ Rolling Stone 2020年7月

Wilcoのジェフ・トゥイーディはBlack Lives Matter運動に関連して「今後自分の作詞作曲の印税の5%を黒人の権利向上団体に永遠に寄付する」という声明を出しました。その件についてRolling Stone誌がインタビューしているので訳してみました。

もしもRolling Stone Japanで翻訳記事を出す予定があるなら削除しますので言ってくださいね。って、こんなところ見てないと思いますが。

これでだいたい半分です。後半は明日以降にUPします。

 

オリジナル記事はこちらです。

https://www.rollingstone.com/music/music-features/jeff-tweedy-reparations-royalties-racism-interview-1024524/

 

 

 

ジェフ・トゥイーディはなぜ音楽業界に賠償を呼びかけたのか。

アメリカの文化は黒人の文化だ」とウィルコのフロントマンは語る。「『印税の窃盗』は対処されていない犯罪だということが現実であり事実なんだ」

 

 

 

ミネアポリスで警官がジョージ・フロイドを殺害した後に起こった、6週間に及ぶBlack Lives Matterの全国的な抗議行動の中、ミュージシャンたちは音楽業界における長年続いた構造的な人種差別に自らが加担した役割を無視できないと考えている。それらの活動は主に象徴的なもの(ラジオの編成から「アーバンurban」(注・アーバン・コンテンポラリーからきた、R&B他の黒人音楽の総称)という言葉を取り除く等)から、大物サポーターとしてリル・ナズやハリー・スタイルスを擁する、音楽業界に公認された団体であるBLAC(Black Music Action Coalition黒人音楽行動連合)の形成にまで広がっている。

 

音楽における人種的な不平等と熱心に闘っている白人ミュージシャンのひとりがジェフ・トゥイーディだ。彼は今後ソングライターとしての印税の5%を人種的公正に専念する様々な団体(Black Women's Blueprint、Movement for Black Lives等)に寄付する、という声明を出した。

 

ウィルコのフロントマンの誓約は、彼の仲間たちに向けて行動を呼びかけるものとして発言された。「現代の音楽産業は、ほとんどすべて黒人芸術の上に築き上げられている」と、彼が6月18日に出した声明は表明している。「黒人アーティストたちに当然所有されるべき富は完全に盗まれている…私は常に、この巨大な不正に取り組む業界全体の対策があるべきだと思ってきた」

 

トゥイーディのプランは「賠償」という考えに影響され、また、それを熟知したものであるが、現時点においては音楽業界に広がる人種的不正の個人的な犠牲者よりも伝統的な非営利団体への金銭的な再分配、という構造になっている。現在それは業界の出版部門(注・原文はpublishing wing of the industry。直訳すると「出版」ですが日本語的には「レコード会社」のほうが意味が近いかと思います)に主眼が置かれている。トゥイーディは歴史的に音楽界に起こってきた大きな経済的な人種的不正に焦点を当てると考えている。

 

業界全体のより幅広い金銭的な考えについて彼が示した最も具体的な提案は、主要なレコード会社がソングライターとの契約の際に印税のいくらかの割合を人種的公正に成果を上げている組織に寄付するという条項を入れる、ということだ。トゥイーディは提案したこの条項を単純に「臓器提供のボックスへのチェック」(注・運転免許証の裏にある「臓器提供に関する意思表示」欄のことだと思います)と例えている。

 

BMI(Broadcast Music, Inc)、ASCAP(American Society of Composers, Authors and Publishers)、SESAC(Society of European Stage Authors and Composers)(注・3つともアメリカの著作権・実演権管理団体。日本のJASRACのようなもの)、その他すべてのソングライターの印税を徴収し支払う団体の皆さん、私はあなたたちにそのようなプログラムを実行する方法を調査することを求めます」とトゥイーディは声明に書いている。

 

3つの主要な印税管理団体は皆、特に具体的な約束はしていないが、このアイディアをサポートすると表明している。「ASCAPは印税の一部を人種的公正に貢献したいと思っている私たちのメンバーをサポートする方法を調査中です」と、この組織のスポークスマンはローリングストーン誌に語っている。

 

BMIはトゥイーディも利用している権利団体だが、彼らはこのように語っている。「私たちの組織では印税のいくらかの割合をチャリティー活動の団体を指定して支払うことができますが、これまでは単発的な場合に限られていました。私たちは今、その機能を拡張してもっと幅広くかつ自動的にできるかどうかを検討中です」

 

SESACは、他の団体はともかくとして、ローリングストーン誌にこう語った。「SESACにおいては、所属しているソングライターや発行者が彼ら自身の判断で書面を通じた指示により第三者の団体に印税を直接支払うという慣例はあります。私たちは喜んでソングライターや発行者をサポートしますし、彼らが人権や経済の公正のために活動している団体に印税の一定の割合を寄付することを望むなら、それを受け入れます」

 

今までのところトゥイーディは仲間のアーティストたちが公私において彼を支持してくれないことに失望している。トゥイーディの呼びかけに賛同した数少ない貴重なアーティストのひとりは、ナッシュビルのシンガーソングライター、エリン・レイだ。「ジェフのツイートを見てとても勇気づけられました」彼女は既に自分の上演権を管理する団体SESACに連絡を取り、そのオプションを実行できるか問い合わせた。「私にとってこれは自分が構造的な差別から利益を得ていたことを認め、和解へ向けてのささやかなスタートをするチャンスなんです」

 

自分の表明は根本的にはこの問題についての公的な声に関与することの単なる始まりに過ぎないとトゥイーディは思っている。「俺たちはまだ始めたばかりなんだ」彼は音楽業界における人種的公正の計画を正式なものにする将来のプラン(現在はまだ流動的だが)について語っている。組織化や意見のとりまとめにほとんど経験のないソングライターとして、彼は、自分のアイディアは提案や改善を受け入れる、と言う最初の人物だ。

 

トゥイーディは最近ローリングストーン誌に彼の声明に対する最初の反応と、彼が見ている現在の音楽業界に深く埋め込まれた構造的な人種差別について、また、音楽業界の賠償を提唱する者として一歩踏み出した理由について語った。

 

 

RS:個人的に、また業界全体に渡って行動を呼びかけるために進み出た決断について順を追って話してもらえますか?

 

Jeff:そもそも最初はひとりの音楽ファンとして始めたんだ。ロックやジャズ、それとすべてのいろいろな種類の音楽が、自分にとってとても大きな意味があった。もし君が、俺がいま言った音楽のたくさんのいろんなことがどこから来たかという歴史に興味があるなら必ず黒人アーティストにたどり着くだろう。黒人たちの才能がなければ俺たちのカルチャーは(今の姿の)俺たちのカルチャーじゃなかったということは大げさでもなんでもない。そこには恥ずべき歴史があるし、この業界には今も恥ずべきものが存在する。現在の黒人アーティストの扱われ方についてもそれと異なる不公平なものがある。条件が平等じゃない。長い間ずっと、これは取り組まれなければならない問題だと思っていた。単純にも、たぶん「ロックの殿堂」あたりがその役割を果たしてくれるだろうと思っていた。でもそのかわりに「ロックの殿堂」はたった今シスター・ロゼッタ・サープを殿堂入りさせることにやっと手を付けた、というところなんだ。それほど重要ではないと自分が思い気にもかけていないことを手当たり次第に撃つような真似はしたくないんだけど、いくつかの団体、たとえばグラミーやMusiCaresとかが行動を起こすだろうと。でもこの音楽業界の一部で今も行われている構造的な詐欺や盗みに対する取り組みをひとつも見つけることができなかったんだ。ちょっと自分の周りを探してみたけど俺たちは何も見つけられなかった。だから多くの人と同じように、この数か月に起こったすべてのことを、この問題における自分の役割について反省し、聞き、調べるように、という要求として受け入れたんだ。一方、軽く自分の背中を叩いて「うん、これって以前から気が付いてたことだし、俺はいつも正しい側にいて仲間になろうと思ってたし」って言うこともできるよな、って感じたんだ。それはほとんど事実だし。でもそれでもまだ居心地の悪い感覚があって、「今まで正しく扱われてこなかったこの種類の問題に、俺たちのビジネスはちゃんと取り組んでこなかったよな」みたいな。俺の声明では、アーティストたちに責任を持つことを望んでいる。でも(アーティストだけでは)荷が重いんだ。業界全体で前に進まなくちゃ。コロンビアレコードは過去に(1950年代)黒人には絶対に印税を払わない、って自慢していた。俺は歴史学者じゃない。俺は君が求めるような、黒人が被害を受けてきたすべての問題を並べ立てるような人間になるつもりはない。でもそのことは十分に実証されてきたし、知りたいと思えば誰だって見つけることができるんだ。

 

RS:あなたの「行動しよう」という呼びかけは個人的な説明責任から始まったものですが、結局は業界全体でこの問題を支援していこうと勧めていますね。

 

Jeff :そのとおりだよ。数字は少し関連性がないけどね。5%というのは正直に言って自分が続けられる数字という感覚なんだ。多くのミュージシャンたちにとってはいい実例ではないかもしれないということはわかる。完璧に理解できるよ。もう一度言うけど、完全に的外れということもあり得る。会話の始まりに過ぎないかもしれない。でもこれは俺の展望だったんだけど、たとえごく一部であっても、世界中で音楽を作っているほとんどすべての人がそうしたら、それはすごいことだと思ったんだ。現代の音楽業界に加わっている全員が、今まで決して印税を支払われることがなかったたくさんの(黒人)アーティストたちに莫大な負債を負っていると俺は確信している。そして彼らは印税を払ってもらえなかったから、彼らのコミュニティや家族は生き延びるための、また子孫に残すための、いかなる種類の財産も蓄積できなかった。驚くべき不正だよ。

 

(続く)