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Pitchfork Jeff Tweedy & Spenser Tweedy Interview  October 2020 (by Quinn Moreland) その1

昨年10月に出たPitchforkのジェフと長男スペンサーのインタビューを訳しました。元記事はこちら。幼い頃のスペンサーとジェフが一緒に演奏している写真がたくさんあって楽しいので是非見てみてください。

しかしジェフの例えや言い回しはややこしい…。今回特に、最後の方(明日UPします)が意味取りにくいです。不完全燃焼な訳になってしまったことをお許しください。まあ力不足はいつもだけど。

 

pitchfork.com

 

ジェフ・トゥイーディがお父さんだったらいいのに、と思っている人はたくさんいる―スペンサー・トゥイーディにとって、それは現実だ。

 

ウィルコのフロントマンとその長男が語り合う。彼らの新しい本、互いに何を学び合っているか、そしてdad-rock(親父ロック)について。

 

パンデミックの初期、私たちのほとんどがこの恐ろしいシェルターでの生活をなんとか理解しようとあがいていた頃に、トゥイーディ一家はクリエイティブだった。ジェフ、妻のスージー、息子たち―スペンサーとサミー―はシカゴの自宅に結集し、この状況を乗り切ろうとしていた。インスタグラムで「The Tweedy Show」と銘打って、ジャムセッション、名曲のカバー、コミカルな家族のエピソードを配信し始めたのだ。ロックダウンの規制が徐々に緩やかになっても毎週の1時間に及ぶ配信は続いている。誕生日を祝い、犬が画面に乱入し、WAP(注・Wireless Application Protocol。スマホなどのデバイスでインターネット閲覧等のサービスが行えるようにするための技術仕様)についての活気のある会話が交わされた(ジェフ「俺の葬式ではこれを流してほしいね」)。すべてがとても健全だ。

 

ジェフは53歳、スペンサーは24歳であるが、2人はウィルコのスタジオからのビデオチャットで話しながら、うちの家族は絵的に完璧だよね、と笑い合っている。「ぴったりくっついて暮らしている他の皆のように俺たちもパンデミックの重さを感じているよ」とジェフは語る。「The Tweedy Showをやっているときはお互いの神経を逆なでしてるんだ。カメラが自分の顔に向いているときにうまく切り抜けようとするのはとても面白いよ」

 

たとえThe Tweedy Showの舞台裏が常に青空に虹が出ているようなものではなかったとしても、ショーはトゥイーディ家のファミリーバンドとしての雰囲気の偽りない延長線上にあることが感じられる。ジェフが2018年に出した自伝『さあ行こう。ウィルコと音楽の魔法を探しに』で書いているように、彼とスージーは息子たちに両親の仕事がどういうものか隠すことなくしっかりと見せることが重要だと常に考えていた。だからスペンサーとサミーは現在は閉店しているスージーのライブハウス、ラウンジAXにいつも出入りしていたし、地元シカゴでのウィルコのライブに出演したり、可能な時にはツアーに同行したりしていた。その結果、ジェフはThe Wiggleworm dads(注・Wigglewormsはシカゴの子供向け音楽教室)という名のスーパーバンドのメンバーとして、4歳のスペンサーを含む子どもたちの前で演奏したこともある。(注・他のメンバーはザ・ワコ・ブラザーズのジョン・ラングフォードとレッド・レッド・ミートのティム・ルッティーリ)

 

スペンサーは早くから音楽を始めた。小学生の時には既にBlistersというバンドでドラムをたたいていた。のちにジェフとスペンサーはTweedyと名付けたプロジェクトをスタートさせ、2014年にアルバム「Sukierae」をリリースした。それ以来スペンサーはジェフがプロデュースしたメイヴィス・ステイプルズやノラ・ジョーンズのレコードでドラムを叩いている。その一方で、彼自身の名前で何枚かの素敵なEPをbandcampでリリースしている。ここ数年、スペンサーとサミーは今回リリースされた「Love Is The king」を含むジェフのソロアルバムにも参加している。

 

それら全てに加えて、ジェフとスペンサーは二人そろって新しい本を完成させた。ジェフの本『How To Write One Song』は、ある部分は手引書であり、またある部分では精神的な声明である。この小さな本は曲作りを細かく分解して一連の小さなエクササイズに落とし込み、その一方で創造が人生を豊かにする力について語っている。「自己啓発本を書くつもりはなかったんだけど、これが俺の言いたいことなんだ」と彼はこの本の中で説明している。「俺は歌を作ることによってとてつもなく幸せな人間になったと思うし、以前よりずっと世の中と上手くやっていけるようになったんだ」

 

スペンサーの本、『Mirror Sound』は一つの曲というものを越えて、自宅でのレコーディングと創作のより大きなプロセスについての本だ。ローレンス・アゼラドとの共著であり、フィル・エルヴェラム、シャロン・ヴァン・エッテン、オープンマイク・イーグル、ブレイク・ミルズ、ヴァガボンのインタビュー、他にも大勢の自宅でレコーディングするミュージシャンの写真が掲載されている。ほとんどレコーディングスタジオで育ったと言えるスペンサーだが、自宅録音について知ることで人生が変わるような実感を得た。「こんなにたくさんの人が、高校生の子どもでさえも、自分の力でレコードを作ることができるなんて知らなかった」と彼は本の導入部で書いている。

 

どちらの本も、芸術とは名門の学校に行けたり、自前の高級な設備を持っている人(または有名なロックスターと関係がある人)のみが生み出すことができる、という神話を解体している。「クリエイティブな人とそうでない人がいる、なんて考えは排他的だし頭がいかれてる」とスペンサーは書いている。「それよりも、資料にどのくらいアクセスできるかとか、そもそも始めるための能力の差とか、芸術に費やせる時間に影響を与えるような刺激的な経験をどのくらいしてきたか、ということのほうが真実じゃないかと思う」 彼らが、私たち全員が自分の持てる時間の中で如何にクリエイティブになれる可能性があるかについて語り合うのを聞いていると、素直に「やってみよう」と思わされるのだ。

 

 

ピッチフォーク:ジェフ、スペンサーとサミーが子どもの頃、あなたとスージーはどのようにして二人がクリエイティブであるように仕向けたのですか?

 

ジェフ:多くの親たちは素晴らしい目標を持っているけれど、子どもたちの人生に干渉しすぎる。スージーと俺はいつも彼らを独立した一人の人間ではないように扱ってきた、とは思わない。俺は二人を言い負かして黙らせたりすることはなかったし、二人はより大きな概念を理解していると思っていた。それに俺はスペンサーやサミーと一緒に床に座り込んで絵を描いたり楽器を弾いて歌ったりするのが大好きだったし、そうすることが当り前のことなんだっていう雰囲気を作ろうと心がけていた。多くの家庭では庭に出てキャッチボールをするのが普通のことだ、ってのと同じようにね。そこには暗黙の了解があったんだ。だって俺自身がまさにそういう人生を歩んできたんだから。そんなことが可能なんだ、ってわざわざ言う必要なんかない。俺自身が、誰でも作品を作って、それを発表して、演奏することができる、っていう生きた見本なんだ。

 

スペンサー:それと合わせて、モンテッソーリ学校(注「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目標として子どもの自発的な活動を促すモンテッソーリ教育法を行う学校)に通ったことがとんでもなく幸運だった。そこでは皆が生徒の話をちゃんと聞いて、シェアするに値する考えを持っている人物として扱ってくれる。それは甘やかすことと同じではないんだ。敬意にほかならない。家でも学校でも大人に対するのと同じように敬意をもって接してもらえたから、作品を作ってもいいかどうか疑問を持つなんてありえない、って感じだったんだ。芸術への奨励は環境と深く結びついていた。それこそが僕の特権だったと思う。お父さんのギターを弾けるという有利な立場、みたいな現実的な形のあることよりもね。それもまたとても大きな部分ではあるけれど。だって明らかに他の人よりも道具へのアクセスがとても簡単にできるわけだから。

 

ジェフ:もうひとつ無視できないことは、特にスペンサーは、ほんの小さな子どもの頃にラウンジAXという世界で一番クールなクラブのひとつに毎日通って、おびただしい数の大人たちがドラムをセットアップして、演奏して、音楽について話しているのを見ていたんだ。学校の外ではスペンサーの環境のほとんどすべては、大人たちが芸術を作っている所だったんだよ。

 

ピッチフォーク:スペンサー、こんなにたくさんの創造性に囲まれていたことは、あなたの音楽についての考え方をどのように形作りましたか? 芸術的な人生に反抗しようという気持ちは起きなかった?

 

スペンサー:自分の傍にいる両親がロック界の人間だという場合にどのようにして成長していくか、ということといつも悪戦苦闘していたよ。そのことでいつも居心地の悪い思いをしてきた。特に2014年、「Sukierae」の発売後に父さんとツアーをしたときにしばしば感じたね。たくさんの人がまず最初に思った疑問は「あなたはお父さんとツアーをしているわけだけど、それって変じゃない?」ってことだった。それについて僕が考えるようになったのは、こんなに素晴らしい、僕のやりたいことをサポートしてくれる両親を持ったことに本当に感謝するし、そのことは他のどんなことをもひっくり返してくれる、ってことだけなんだ。もし僕があまのじゃくだったり反抗的な人間だったりしたらわからないけど。でもそういう感情のはけ口は他にもたくさんあると思うし。特に今ではね。

 

ジェフ:俺は、ジェネレーション・ギャップなんて誰かがマーケティングのために信じさせようとしてるでたらめだと思うよ。アメリカのビジネス界が人口統計学的に世代を分けて、「ジェネレーション」という考え方で対象となる人を定め、分割して支配するためのちょっとした手段なんだ。そいつが俺たちの世代に若者を拒絶する許可を与えてる。恐ろしいことにね。そして若者たちには、たとえば俺みたいな人間を無意味にさせるようなやり方で世の中は変わってきた、みたいな考えを植え付けるんだ。でも多くの場合、異なる世代にもたくさんの共通点がある。だって俺たちの年齢の人間は全員がかつてはスペンサーの年齢だったんだよ。それにインターネットが昔よりも時間を循環させている。俺が子どもの頃、両親のことを好きな奴なんて聞いたことがなかった。もしパンクロックやそういうものにはまっていたら、両親は闘わなければならない一番身近にある権力だったんだ。

 

(続く)